こんにちは、エクシールの藤吉です。
今回の記事でご紹介していくのは工場内の「カビ対策」について。これから気温も高くなり、湿気の多い梅雨の季節もやってきます。カビの生えやすい場所を把握するとともに、カビが生えることに対する食品工場のリスクもしっかり理解して、クレームの出ない衛生対策を行っていきましょう。
※2019年6月13日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して再度公開しました。
そもそもカビって何?
カビは酵母やキノコと総称して「真菌」と呼ばれるグループに属しています。
糸のような「菌糸」と小さな種のような「胞子」から成り立っていて、菌糸の先端から栄養や水分を吸収して成長し、胞子によって増殖します。
菓子類などのでんぷんや糖分を含んだ物質を好みますが、汚れやほこりも栄養源になります。
カビというと古くなった食べ物に生えるイメージが強いですが、実は胞子が付着してしまえば新しい食べ物でもカビが増殖してしまいますし、食べ物がない場所でもホコリを栄養にカビが成長してしまうのです。
また、カビというと湿気の多い場所、というイメージもありますが、実はカビの胞子は乾燥に強く、長期間環境中に生存しやすいという特徴も持っています。
カビの元となる胞子は私たちの生活する環境中に常に存在しており、工場内の環境を気を付けて管理していないと、条件によっては増殖してしまう恐れがあるのです。
食品工場でカビはどんな被害をもたらすの?
食品工場においてカビが及ぼす被害やリスクにはどのようなものがあるのでしょうか?
●建物の劣化
●悪臭の原因
●景観を損ねる原因
●監査時の評価の低下
●異物混入クレームの原因
●健康被害 ・・・など
特に食品を扱う産業の場合注意しなければならないのは、製品に混入してしまった場合にクレームや、最悪の場合食中毒などの食品災害を起こしてしまうリスクをはらんでいることです。
カビによるクレームの実態
しばしば食中毒の原因として取り上げられる「細菌」と比べて、カビによるクレームは消費者からの「商品にカビが生えている」という申し出がほとんどです。
これは、カビは菌とは異なり、成長すると肉眼で見える程に大きな塊となるからです。
また成長したカビは形状が崩れにくく、加工機械に生えていたカビの塊が落ちて食品中に混入する(カビの塊が食品中から見つかる)というパターンも多くあります。
カビクレームの事例としては、飲料などの液体状の食品でカビが膜や綿上の塊として浮遊している、カビ自体の色や生産される色素により食品が変色する、カビによる異臭や膨張を伴うものなど、様々なパターンが挙げられます。
カビクレームの多い要注意な食品は?
カビクレームが発生しやすいのは、どのような食品なのでしょうか?
2010年のデータではありますが、食品分析開発センター(http://www.mac.or.jp/mail/100701/03.shtml)によると、
●水分が比較的少ない食品
●保存性の高い食品(賞味期限が長いもの)
●農産物が原料になるもの
というのが、カビによるクレームの発生しやすい食品の特徴となるようです。
具体的には、パン、菓子類、農産物や農産加工品、乳製品、飲料などが、カビクレームの多い食材・食品となります。
カビの生えやすい要注意エリアは?
カビの発生条件
温度:-5~30℃(好条件:15~30℃)
湿度:80%以上
栄養:でんぷんや糖分をはじめ、汚れやほこり、塗料、壁材等
上記のような環境でカビは発生します。
食品工場では、湿気の溜まりやすい場所、栄養源の豊富な場所に発生しやすい傾向があります。
次からは、特に気を付けるべき個所をご紹介していきたいと思います。
原料食材の保管庫
原材料に付着していたカビが、原材料の養分・水分を使って保管庫の中で増殖する恐れがあります。ここで注意する点は、例えば保管してある100個のじゃがいものうち1つでもカビの菌がついている場合、保管期間や温度・湿度などによっては、他の食材にも広がってしまうことです。
シンク・排水管などの水回り
水を使うエリアは常時湿った状態になるため、湿度が高くなりがちで、カビの生える絶好の条件が整ってしまいます。こういったエリアは特に気を付けて管理をする必要があります。
冷蔵庫や冷凍庫の出入り口
冷蔵庫や冷凍庫の周りも結露が起こりやすく湿度が高くなるため、カビ対策では注意が必要な個所となります。カビの生えた冷蔵庫・冷凍庫で食品を保管していては、食品にカビが混入してしまう危険性も少なくありません。
まな板などの調理器具
食品が直接触れる調理器具や製造機械には、食物残さが付着しやすく、これがカビの栄養になってしまいます。食品が直接触れるからこそ、毎日の清掃とカビが生えにくくする対策(熱湯消毒など)を行っていきましょう。
調理作業場の天井
水蒸気が発生するような機械や水を扱うエリアなど、湿度の高い部屋で起こります。作業時に発生した蒸気が天井に当たり、そこからカビが生えてきたといった事例もあります。
天井にカビが生えると、その下で作業している食品にカビが降ってきてしまうリスクがあります。湿気の多い作業室では、清掃に加えて換気扇などで空気を循環させるなど、湿度を留まらせておかないための対策が効果的です。
空調設備
エアコンや換気扇などの空調設備の中は、室内のほこりが堆積しやすく、また内部には水分もたまりやすいため、カビが発生しやすい環境となっています。
カビの生えたまま清掃を怠っていると、空気と一緒にカビの胞子まで部屋中に送っていることになりかねませんので、定期的に確認しましょう。
また、エアシャワーなどの強い風を送る装置は、誤った使い方をすると、体についたホコリや汚れを吹き飛ばした後に舞い上げてしまう可能性もありますので、定期的な清掃や、ホコリを舞い上げない工夫などが重要です。
このように見ても、工場内での湿度の多い場所や汚れのたまりやすい場所、掃除がしづらい場所というのが要注意ということがわかります。
食品にはどれくらいカビが潜んでいるか
食品の原料や少しでも手を付けた食品にどれくらいカビがいるのかはさまざまですが、カビは土壌にいるので土が付着した野菜などには、特に多くのカビがいます。また、食品の養分や水分をうまく利用して長期間生き続けるカビもいます。粉状食品の小麦粉では、1グラム中に100~1,000個、香辛料では100~10,000個、食肉・食品加工品では10~100個、冷凍食品では10~100個、ミネラルウォーターでは0~100個などのカビがいます。熱処理や殺カビを行うなどの対策を施し、食品からカビを取り除きましょう。
まとめ
いかがでしたか?今回はカビの生えやすい場所に焦点を当てて、工場内のカビ対策についてご紹介してきました。
紹介したカビの生えやすい場所は定期的に確認・清掃を行っていくとよいでしょう。
↓具体的な対策の仕方についての記事↓もありますので、是非チェックしてみてくださいね!
参考:食品のカビ危害と防御→http://www.mac.or.jp/mail/100701/03.shtml