公開日: 2019年6月19日 - 最終更新日: 2022年9月5日

食品工場のカビ対策をはじめから|カビを撃退する3つの環境作り

鈴木ちか
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こんにちは!半月ほど前から玄関先にツバメが巣を作ったのですが、最近どうやら新しい住人が増えたらしく、たまに家の中からでもピヨピヨと声が聞こえます。かといってそっと覗きに行っても、巣から頭だけ出した母親ツバメに「なにか御用?」といった表情で見下ろされたり、帰ってきた父親に隣でバサバサされたりと、自宅ですが玄関先では肩身の狭い思いをしています^^;

さて、今週の記事は先週に引き続いて工場内のカビ対策について、その中でも今回は「カビの生えにくい環境づくり」に焦点を当てて見ていきたいと思います。
カビの除去や清掃をしていても、次から次へと生えてきてしまう工場内のカビ。カビの生えにくい環境を整えることで、しっかりと衛生管理を行っていきたいですよね。
そのためにもカビの成長する仕組みや条件をしっかり理解して、自社の環境づくりに役立てていきましょう。

前回の記事も是非チェックしてみてくださいね!

食品工場のカビ対策をはじめから|カビの生えやすい場所って?

2018年4月19日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して再度公開しました。

 

 

カビの成長サイクル

カビ対策をするうえで、まずはカビの成長サイクルを理解しておく必要があります。
カビが増殖するにはまず、カビの元となる「胞子」が、食品や壁などの基質となるものに付着するところから始まります。
着床したカビ胞子は、温度や湿度などの環境条件がそろうと「発芽」し、基質の栄養元に「菌糸」という枝のようなものを伸ばし成長していきます。
カビは環境条件が合う限り成長し続け、更に表面に伸ばした菌糸で胞子を作り、空気中に大量に飛散させます。その飛散した胞子がまた新たな基質に着床し、また増えての繰り返しになります。
特徴としては、細菌などとは異なり成長がゆっくりな点で、新しく胞子を成形するのに4日~7日かけて生育すること。なので、食品中に落下した胞子が製造中に短期間で増殖することはほぼないということです。

 

 

カビはもともとは土壌の中に生息する菌ですが、このライフサイクルからわかるように、「胞子」は空気中どこにでも漂っていると考えられます。
注意すべきは、この「胞子」の状態のカビは乾燥に強く、増えはしないものの長期間死滅せずに生存し続けていること。浮遊した胞子を私たちは知らずに吸い込んで生活しているわけですが、健康状態など人によっては気管支ぜんそくなどのアレルギーを引き起こす可能性もあるようです。

また、一般的なカビは生えると白っぽくなります。黒や紫などの色は胞子の色で、つまり色がついている状態のカビはすでに胞子をまき散らしている状態ということに・・・。

 

 

カビの発育する環境

カビが成長する主な条件としては、「温度」「湿度」「栄養」「pH」などがあげられます。

 

カビの発生する温度

カビが最も活発に発育する温度(生育最適温度)は、文部科学省のカビ対策マニュアルでは「25℃~28℃」、農林水産省のコメのカビ汚染のガイドラインでは「20℃~30℃程度」とされています。
また、この生育最適温度外でもカビはゆっくりと成長していくのですが、カビが成長することのできる温度(育成可能温度)は、文部科学省では「0℃~40℃」、農林水産省では「0~10℃、60℃以上でも成長できるものもいる」と表記されています。
このようにカビは私たちの生活する温度で繁殖を行います。なので、作業場や保管中・搬送中の食材などにカビが付くと増殖してしまうため、注意が必要です。

 

 

では、この温度の範囲外ではカビは生きていけないのかというと、成長はしづらいが死にはしないというのがほとんどです。
水に溶かしたカビを80℃で30分加熱することで、ほとんどのカビを死滅させることが出来るというデータがありますが、乾燥状態での加熱では、胞子を死滅させるのに120℃以上で1~2時間かかるという結果もあり、加熱殺菌で食品のカビを除去することは難しいとわかります。

また、カビは0℃以下の温度環境では成長できなくなりますが、生きているので注意が必要です。

 

カビの発生する湿度

65%以上がカビの発生しやすい湿度と言われいます。
梅雨の時期などは湿気が多く、カビの生えやすい季節となります。また、気候だけではなく、工場内で扱う水や水回り、結露、蒸気などによる湿気も、カビの生えやすい環境を作ってしまう原因となることが多くあります。
また、湿度が高くなれば成長スピードもUPします。

湿度が55%以下では、カビは成長することが出来なくなります。
しかし、成長しないだけで生きていますので、成長できる湿度になると再び成長をし始めます。特に胞子状態のカビは乾燥に強いため、乾燥させてカビを除去・・とはいきません。

湿度はカビの発生を抑えるうえで管理すべき必須項目なので、特に注意して管理しましょう。

 

カビの発生に必要な栄養

カビの増殖には栄養が必要です。食品では菓子やもち類など、でんぷんや糖分が多いものは特に発生しやすく注意が必要です。
また工場内の壁などに発生するカビは、食物残差やほこり、汚れ、塗料や壁材などを養分として増殖しているため、カビの発生を防ぐためにも清掃をこまめにすることが大切です。

エリア別!食品工場の衛生対策まとめ

 

カビの発生するpH

カビの発生する条件として、pH(ペーハー)の環境というのも挙げられます。
カビが発育するのに最適なpHは4~4.5と非常に狭く、アルカリ性の環境ではカビは発生しにくくすることが出来ます。
ただし、最適pHは狭いですが、発育可能pHは2~8.5とかなり広いことも把握しておきましょう。

 

 

適した予防対策でカビの発生を防ごう!

すでにカビが生えている場合、その場所はカビの生える条件が整っていることになります。そのため、せっかく業者などに依頼してカビの除去を行っても、しばらくすると再びカビが発生してしまった・・・なんてことに。

大切なのはカビの除去だけでなく、カビの生えにくい環境を作っていくことです。
次の項目から工場内で使えるカビの予防方法を3つ紹介していきたいと思いますので、参考にしてみて下さいね。

 

 

工場内のカビ予防1:湿度管理を行う

シンクや配水管などの水回り、冷蔵庫や冷凍庫がある部屋などは、飛び散った水や結露によって湿気が多くなりがちです。
そんな時は除湿機などを置くことによって湿度を低く保つようにしましょう。

湿度43%以下の環境を毎日3時間以上保つことでカビの増殖を防ぐことが出来るという研究データがあり、55%程度でもかなりの効果があるそうです。
これを目安に、湿度の高くなりがちなエリアを湿度管理していくとよいと思います。

食品工場向けの結露対策の記事もありますので、こちらもチェックしてみてくださいね!

食品工場における天井の結露対策|今すぐ始められる結露対策3選

 

 

工場内のカビ予防2:防カビ用の素材・コーティングを使う

カビの発生しやすい場所は、予めカビの発生しにくい素材やコーティングを行っておくという対策方法があります。
効果としては、カビの発生しにくい材質に加え、汚れが付きにくい・ついたときに落としやすいことがポイントとなります。

もちろん防カビ剤の壁だから必ずカビが生えないかというとそうではありません。対策3に紹介するような、定期的な清掃が重要となってきます。

 

 

工場内のカビ予防3:こまめな清掃が重要

上記のような湿度対策や抗菌対策をすることで、カビの発生しにくい環境を作ることが出来ます。しかし、これだけでは対策として万全ではありません。
これらに加えて、壁や床をこまめに清掃して付着したカビの素を増殖する前に除去していくこと、工場内を清潔に保つことが重要です。
湿気が溜まりやすい場所や、床を含めた腰から下の壁や床は特に念入りに、定期的に清掃を行っていきましょう。

「床」を経由して工場内に菌や異物を広めているかも?足元の汚染対策の仕方6選

 

まとめ

いかがでしたか?今回はカビ対策の中でもカビの発生しにくい環境づくりについてまとめてみました。

対策をする際は、除湿機や扇風機を設置するだけ、ではなく、きちんと効果があることを湿度計などで確認したうえで、定期的に設定した湿度にちゃんとなっているか?を確認することが大切です。
是非この記事を参考に、自社工場に合わせた適切な対策を行い、クレームゼロの会社を目指していきましょう^^

 

次の記事では、カビが生えているのを発見したとき、すでに生えているカビに対処するときの方法を見ていきたいと思います!

 

食品工場のカビ対策をはじめから|生えてしまったカビの正しい処置方法

 

 

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鈴木ちか

ウレタンの特性を活かし様々な商品を製造・販売している、株式会社エクシールで働いています。最近は食品工場向けの依頼が多く、仕事を通して学んだ製造業のアレコレを記事にしていきたいと思っています。同じ製造業の方が見て何かヒントになるような、そんな記事が描けるよう日々努力していきます!
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