公開日: 2019年7月3日 - 最終更新日: 2022年9月5日

食品工場のカビ対策をはじめから|本当に危険なカビの健康被害を知ろう

鈴木ちか
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こんにちは!
先週は台風が猛威を振るい、私の住んでいる地域でもたくさんの雨が降りました。
何より驚いたのが、台風なのに・・・暑い!!大雨が打ち付ける中、ムシムシ高い湿気で寝苦しい夜を過ごすことになりました。

 

さて、今回の記事でご紹介するのは、カビが原因で発生する従業員や消費者の健康被害について。
カビは工場の劣化や商品の品質悪化・クレームだけでなく、口にしたお客さんの健康被害、更には商品を口にしない、働く従業員の体調不良などにも影響することもある重大な問題です。
カビ」が原因で起こる健康被害をしっかりと把握することは、クレームや労働災害をゼロにするためにも重要なことなのです。

 

 

カビの健康被害は3つに分類される

湿気の多いところや汚れの多い場所、また保存状態の悪い食材や長期保存できる食材に発生しやすいカビ。
もしかして、見た目が悪くなるだけ、腐敗が早くなるだけと思っていませんか?

増えたカビや毒性のあるカビは人の健康に悪い影響を及ぼします。
カビの影響で引き起こされる健康被害は大きく分けて3つ。

 

  • カビ胞子によるアレルギー
  • カビによる真菌感染症
  • カビ毒による食中毒

 

があります。・・・なんだか言葉を聞いただけで怖くなるようなものばかりですね。
次の項目からは、それぞれについて詳しく見ていきたいと思います。

 

カビアレルギー

アレルギーとは、体の中に入ってきた菌やウイルスをやっつける免疫が過剰に反応し、体に害を及ぼしてしまう症状のことです。
カビの胞子を多量に吸い込むことで、このアレルギー症状が起こってしまう場合があります。
特に、カビの大量に生えた工場内で働いている従業員などには疾患するリスクがあるため、会社としてしっかりカビ対策をすることで労災ゼロを目指していきましょう。

カビが原因で起こるアレルギーについて3つをピックアップしてご紹介していきたいと思います。

 

カビによる気管支ぜんそく

症状としては咳や息切れ、呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューなどの音がするもので、原因となるカビの種類は、ススカビ・コウジカビ・クロカビ・アオカビ などです。

ススカビやコウジカビによるカビアレルギーはぜんそくの重症化がしやすく危険です。
クロカビは空気中に一番多いカビであり、工場でも発生しやすいので注意しましょう。
同じく空気中に多く存在するアオカビは、チーズなどにも利用される身近なカビですが、その胞子は小さく、気管支の奥まで到達しやすいことが特徴です。

 

カビによるアレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎と聞くと思い浮かぶのが花粉症やハウスダストですが、カビの胞子でも同じようにアレルギーになることで、鼻水が出たりくしゃみが止まらなくなったりといった症状が出ます。

前項目であるカビによる気管支ぜんそくで原因となるカビ(ススカビ・コウジカビ・クロカビ・アオカビ)などは、アレルギー性鼻炎の原因にもなります。
また、アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFS)にも注意が必要です。
この疾患は膿を含んだ鼻水や頭痛、症状が進むと高熱や視力低下などを引き起こし、症状が進むと治療が難しい危険な疾患です。

 

カビによる過敏性肺炎

長期にわたり吸い込んだカビの胞子が原因で起こるアレルギー性の肺臓炎です。症状は、咳・呼吸困難・発熱など。
マッシュールーム作業者肺」「農夫肺」などと呼ばれ、キノコや牧草などを日常的に扱う従業者は、キノコが放出する、また乾草に生えたカビの出す胞子を吸い込んで発症する職業病的なものが有名な一方、「加湿器肺」や「空調病」といった非職業的な原因のものもあります。

また、加湿器や空調はカビを蔓延させるリスクもあるとして、しっかりとした清掃・管理を行っていくことが重要です。

 

 

真菌感染症

免疫力が落ちている状態で特定のカビや酵母の胞子を大量に吸い込むことで、皮膚または皮下組織、あるいは全身の臓器や組織が感染してしまう疾患です。
症状は感染する箇所によってさまざまですが、そのほとんどが健康な大人はほとんど発症せず、子供や老人、免疫力や体力が落ちている人に発病することが多いそうです。
代表的なものとして、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコックス症などが挙げられます。

 

 

カビ毒

一部のカビは「カビ毒」と呼ばれる毒を作ります。この毒を食品と一緒に食べてしまうことで、食中毒を発症させてしまう恐れがあります。
カビ毒はすべてのカビが生成するわけではなく、一部のカビだけが作ります。そのため、コーデックス委員会では、いくつかのカビ毒に対して食品中に含まれていてはいけない基準が設けられています。

 

コーデックス委員会基準
パツリン
デオキシニバレノール
総アフラトキシン
アフラトキシンM1
オクラトキシンA
フモニシンB1,B2,B3

 

日本ではこの中でも3種類に検出されてはいけないカビ毒の量の基準が設定されています。

 

日本で規制されているカビ毒
アフラトキシンB1/検出されてはいけない
パツリン/50μg/kg
デオキシニバレノール/1.1mg/kg(暫定)

 

アフラトキシンはコウジカビなどが生成するカビ毒で、天然物中で最強の発がん物質とされ、肝障害や肝硬変、肝がん等の原因となると言われています。
注意の必要な食品は、ピーナツ、ピスタチオ、トウモロコシや綿実、穀物類などです。

パツリンはアオカビやコウジカビなどが生成するカビ毒で、これまで人への健康被害は報告されていないものの、マウス・モルモット・犬などでの致死毒性が確認されています。
注意すべき食材はリンゴで、リンゴジュースなどの加工品は厳重なチェックが必要です。

デオキシニバレノール(DON)を作るカビはアカカビ(ムギ赤カビ病菌)とされており、嘔吐や食欲不振などの症状、慢性的に撮り続けると免疫系に影響が出ると言われています。
注意が必要な食品は麦類、トウモロコシです。

 

 

まとめ

いかがでしたか?
カビは景観を悪くする、食品を腐らせるだけでなく、放っておくと大量の胞子をばらまき、それによって恐ろしい健康被害を起こすことも少なくありません。
消費者の口に入るものを製造している工場は、その恐ろしさを理解したうえで、しっかりとカビに対する対策・管理を行っていく必要があります。

またカビの胞子は作業者の健康をも害するリスクがあります。大切な従業員を危険から守るという観点からも、これからの湿気の多い季節、工場の中の清潔を保ち、カビが生えていないかをより一層厳しくチェックしていきましょう。

 

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鈴木ちか

ウレタンの特性を活かし様々な商品を製造・販売している、株式会社エクシールで働いています。最近は食品工場向けの依頼が多く、仕事を通して学んだ製造業のアレコレを記事にしていきたいと思っています。同じ製造業の方が見て何かヒントになるような、そんな記事が描けるよう日々努力していきます!
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