こんにちは、エクシールの今井です!
本日は食品機械に使用する潤滑剤の規格についてお話ししていきたいと思います。
※この記事は2020年2月5日に公開した記事ですが、リライトに必要な文言等を追記、修正して再度公開しました。
食品工場と機械用潤滑剤
食品工場では、近年機械化が進み、機械を正常に動かすには潤滑剤が欠かせません。しかし、潤滑剤は食品工場で異物混入のリスクがあると懸念されてきました。
一般的な機械油やグリースなどの潤滑剤は口に入ることを前提としていないため混入したものを食べると発がん性作用や、健康被害などが発生する可能性があります。
食品製造機械も潤滑剤は使用されますが、食品を製造している機械なので、もちろん食品と機械が接触し、潤滑剤が混入する可能性が十分に考えられます。
HACCPでは、そのような事態が起こらないように、危険を回避するための順序を下記のように示しています。
A.潤滑剤を使用しない
B.潤滑剤が漏れない・触れない対策
C.偶発的接触が許容される潤滑剤の使用
現在は潤滑剤を必要としないオイルレスの部品が発売されるなど開発が進んでいますが、電力の使用量増加や、部品の寿命低下など課題が多くあります。
また、漏れない・触れない対策についても、食品と直接機械が接する以上、絶対という確証を持つ対策をすることも難しいため、万が一混ざっても問題ない潤滑剤を使用するといった対策が現状では一番現実的です。
食品機械には安全な潤滑剤を使うことが重要!
そこで今回紹介するのは食品機械用潤滑剤の安全規格である「NSF H1」です。
NSFとは、アメリカで公衆衛生や安全に関する事業を行っている非営利第三者機関です。
食品衛生や飲料水などの安全性に精通していることから、WHOの食品衛生協力センターとなっている機関です。
HACCPの登録審査や、政府関係者、関係団体などと開発した規格に基づいて、食品加工現場で使用する化合物の登録業務を行っており、その中の一つの規格が「NSF H1」です。
NSF H1とは、「食品に偶発的に接触する可能性がある箇所に使用できる潤滑剤の規格」です。
つまり、本来は食品に接触するべきではないですが、この規格に登録されている潤滑剤は万が一食品に混ざって食べてしまっても安全なものです。
一般的な潤滑剤は鉱物油が原料になっており、これは混入すると食べた人に危険が及びます。
一方、NSF H1規格に適合している潤滑剤はベビーオイルや医薬品のコーティングなどに使用されているホワイトオイルや合成油など、米国食品医薬安全局のリストにあるベースオイルと添加剤を配合したものです。
通常の機械潤滑剤は使用できる添加剤があまり限られていないため性能が高いですが、NSF H1規格に適合している潤滑剤は、限られた添加剤しか使用できないため、どのように性能を上げるかが課題となっています。
下記サイトでもNSF H1の規格を取得しているグリースや潤滑油が見られますが、通常の潤滑剤よりは高いものの、すべての部品をオイルレスに交換するよりは安価かと思います。
NSFには、そのほかにも下記のような規格があります。
NSF H2
食品に絶対接触してはならないものですが、工場内部や周囲で食品に混入する可能性のない場所では使用ができる潤滑剤の規格
NSF H3
食品に接触する目的で使用されるものではなく、食肉工場などで肉を吊るすフックの錆防止などに使用できる
NSF 3H
フライパンなどの焦げ付きを防ぐために使われる植物油等、直接食品に接触する目的で使用される離型剤の規格
NSF HT1
本来は食品に接触するべきではないですが、接触する可能性がある箇所に使用できる熱媒体油の規格
まとめ
いかがでしたでしょうか。
機械の潤滑剤が危害になりえるということが盲点だった方も多いのではないでしょうか。
HACCPでも推奨されているNSF H1規格の潤滑剤を使用することで、できるだけコストをかけずに、安全な食品を製造することができます。
まだ通常の機械油を使用している工場も多いかと思いますが、食品機械用の潤滑剤を購入する際はNSF H1規格を取得しているかをチェックしてみてくださいね!
<参考>
NSF H1とは?|JAXジャパン
https://www.jax-japan.com/about_h1.html
食品機械用潤滑剤の安全規格 | NOKクリューバー株式会社
https://www.nokklueber.co.jp/grease_oil04_03
NSF | 一般財団法人 日本ガス機器検査協会
https://www.jia-page.or.jp/certification/nsf/