こんにちは、エクシールの鷲見です。
今回は植物工場についてお話をしたいと思います。
植物工場は小規模でも経営が行えることから注目を集めています。
※本記事は、2020年1月7日に公開した記事ですが、リライトに必要な文言等を追記、その他の部分も修正して再度公開しました。
植物工場とは
植物工場とは、光や温度、養分、水分などの植物が育成するための環境を整え、発芽から育成、収穫、出荷調整までを一貫して行う栽培施設のことです。
環境や生育状況をモニタリングしながら高度な環境制御と生育予測を行い、野菜等の植物を計画生産します。
施設内で栽培することにより季節や環境に左右されず、安定した品質の植物を生産することができる点が特徴です。
植物工場の種類
植物工場には主に2つの生産形式があります。
完全人工光型
完全人工光型とは、完全に閉鎖された空間の中で太陽光を一切作らず蛍光灯やLEDなどの光を利用して生産を行うシステムです。発泡スチロールなどに苗を植え付け、養液に浮かべる水耕での栽培方法が一般的です。
また、この水耕栽培ではリーフレタスなどの葉物野菜の生産が中心となります。
完全人工光型のメリット
■害虫被害や菌類による影響の心配がない
閉鎖空間であるため害虫や病原菌が侵入せず、それらを予防・駆除する農薬が必要ありません。また、土や砂などの付着がないので収穫後は簡易的な洗浄のみで調理することが可能です。これにより、外食・中食業者や施設、学校の給食向けに水洗いの手間を軽減した安全性の高い野菜を提供できるようになります。
■年間を通して毎日の収穫が可能
先述したように、植物工場は閉鎖空間の中で栽培をするため気候変動の影響を受けることがありません。また、栽培環境条件を人工的に制御可能なことから、栽培周期をずらすことにより毎日収穫ができるようになります。
■床面積あたりの生産量が高い
苗を棚状に配置したり斜めに配置したりできるため、スペースを取らず植物を栽培できます。そのため、飲食店や工場の一角を利用した小規模での運営も可能になります。
太陽光利用型
太陽光利用型とは、温室などの半閉鎖空間にて太陽光を用いて栽培を行うシステムです。
太陽光の力の利用が基本ですが、雨天や曇天時には不足分を人工光で補います。
■完全人工型に比べて費用が安い
設備が簡易である点から、設置費用や維持コストがそれほどかかりません。また、太陽光を主として稼働するため光熱費を低く抑えることが可能です。
導入時に検討すべきこと
販売先の確保
はじめに、栽培する植物の種類の決定と販売先を確保します。
一次的な販売先ではなく、年間を通して一貫して提供できる安定した販売先を見つける必要があります。
そのためには、自社の植物工場で栽培したことによる付加価値(清潔さ、下処理のしやすさ等)を把握しておかなければなりません。
初期投資費用の確保
植物工場の導入には、高額な初期費用がかかります。
■初期費用の目安
完全人工型:約3億円
太陽光利用型:約2億円
導入のための費用、事業の維持費用は確保できるのか検討が必要です。
栽培した植物の販売についても、コストに見合った価格設定ができるのか確認しましょう。
植物工場の課題
食品工場の技術はまだ成長途中であるため、様々な課題があります。
例えば、完全人工光型植物工場では必要な設備が多数あるため、初期段階の投資としてまとまった費用が必要になります。また、育成にかかったコストを回収するためにはどうしても単価が高くなってしまいます。
また、経営を軌道に乗せるためには独自で販売先を開拓していかなければならないことから、数年単位での時間がかかります。
植物工場は軌道に乗ると安定した経営が見込めますが、中にはいざ始めてみても知識の不足やコストの高さが原因で断念してしまった企業も多々あります。
知識や技術に対しては情報の共有をし、業界全体として生産の質を上げることが大切です。また、経営のために採算の合うシステムというのを事前に十分に考える必要があります。
まとめ
植物工場は、農業従事者の方の高齢化や食料自給率の低下、天候不順による食材への影響などの問題を解決する農業の新しい形態として広がりつつあります。
現状ではいくつか課題がみられる植物工場ではありますが、研究開発が進めば栄養価の高い野菜や長期間鮮度を保つことのできる野菜など植物工場産ならではの食材の栽培も望めます。
従来の農業と植物工場それぞれのあり方を尊重し、ニーズに合わせて共存していけるといいですね。