こんにちは!エクシールの今井です。
本日は、精密デバイスやチップの故障原因の中でも「静電破壊」についてお話していきます。
原因を知り、対策することで、不良を減らしていけると良いですね。
静電破壊とは
静電破壊とは、帯電した静電気が放電されることで、通常より多くの電流が回路上に流れたことによって、発生した熱が精密デバイスやチップを破壊してしまうことです。
① 帯電、放電ってどんな現象?
全てのものを構成する原子は、電気的にプラスの力を持った原子核(+)と、マイナスの力を持った電子(-)からできています。
安定した状態の原子は、+ と ー の力が釣り合っており、この状態のものに触れても電気を帯びておらず、パチッとすることはありません。
これらは、もの同士の衝突時にバランスが偏り、不安定になります。(例:手がドアノブに触れる時など)
ものは、それぞれ電子(-)を引っ張る力が異なるため、もの同士がぶつかった時、引っ張る力が強い方へ電子(-)が移動します。
このとき、片方のものからは電子(-)が減り、原子核(+)の力が大きくなります。
一方で電子を受け取ったものは電子(-)の力が大きくなり、双方のバランスが不安定になります。
このように原子核と電子のバランスが崩れることを帯電しているといいます。
帯電したものは、原子核(+)と電子(-)のバランスが崩れた状態なので、再びバランスを取ろうとします。
プラスに帯電したものとマイナスに帯電したもの同士が触れ合ったとき、マイナスに帯電している電子(-)はプラスに帯電した側に戻ろうとします。この動きを「放電」といいます。
放電の時、ものとものの間に電流が流れます。
日常生活の中では、ドアノブに触れようとしたときにパチッと電気を感じることがありますよね。
これは、ヒトの皮膚はプラスに帯電しやすく、マイナスに帯電していたドアノブと触れることによってドアノブの電子(-)がヒトの皮膚へ戻ることによって電気が発生しているからです。
電子部品などの精密デバイスはこの放電という現象によって故障してしまうわけですが、どのような対策を取ればよいのでしょうか。
放電をなくすために、以下のような方法によって対策をする必要があります。
- 帯電させない
- 帯電してもすぐに除去する
静電破壊を防止するための対策
1. 帯電させない
帯電させないためには以下のような対策が有効です。
★ 電気を通すもの(導体)の場合
・アースへの接続
・帯電防止グッズの使用
★ 電気を通さないもの(絶縁体)の場合
・もの同士の設置面積・接触回数を減らす
・接触・分離速度を低下させる
・物の表面を円滑化し摩擦を減らす
・導電性を付与する
(表面の場合、帯電防止材の添加や、導電性塗料を塗る。内部の場合は金属物質を混入させたり、導電性ポリマーを使用する)
・湿度を上げる
2. 帯電してもすぐに除去する
★ 電気を通すもの(導体)の場合
・アースへの接続
・帯電防止グッズの使用
★ 電気を通さないもの(絶縁体)の場合
・イオナイザーの設置(ものがプラスに帯電していればマイナス、マイナスに帯電していればプラスの空気イオンを生成・供給する機械)
帯電防止グッズにはさまざまな種類があり、触れ合うものによって使い分けることが大切です。
① 人と精密部品が触れる場合
帯電防止リストバンドを使用すると、手の帯電を防ぐことが出来ます。
アースに接続するコード有りのタイプと、コロナ放電を利用し空気中の導電粒子へ放電するコードレスタイプがあります。
作業や移動のしやすさを考えると、コードレスタイプが使いやすいと思いますが、ものによっては十分な帯電防止が出来ないものもあるようなので、精密デバイスの作業時はチャージプレートモニタなどで帯電していないかを試験してから使用すると良いでしょう。
下記の動画はホーザン株式会社様がYoutubeにて公開している動画です。
コード有りのタイプとコードレスタイプの違いがよくわかるので、ぜひ参考にしてみてください。
引用元:https://www.youtube.com/channel/UCAhZmhLbsp5s0o2vKR4VXhw/about
また、作業着や靴を帯電防止のものにすることや、導電性のあるマット、シートを机や床に敷くことも効果的です。
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② ピンセットや保管ケース等、作業工具と精密部品が触れる場合
帯電防止仕様の製品を使うことで、精密部品への放電を防ぐことが出来ます。
一般的なピンセットも、精密部品をピックアップするときによく使用される真空ピンセットも帯電防止仕様のものがあります。
また、基盤のはんだボール除去、フラックス洗浄に使用できるクリーンブラシや、保管ケースにも帯電防止のものがあります。
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もの自体に帯電加工が施されていない場合は、静電気除去スプレーの使用がおすすめです。
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まとめ
いかがでしたか?
静電気の発生は、静電破壊の他にも、微細なほこりを引き寄せるといったトラブルも引き起こしがちです。
静電気についての正しい知識を身に着け、放電を防ぐための対策を行うことで、何のためにリストバンドやマットを敷いているのかなど、従業員に対しても分かりやすく教育ができます。
しっかりと対策を行うことでNG品を減らしていけると良いですね!
<参考・引用>
静電気の基礎 | 工具のホーザン【静電気対策の森】
https://www.hozan.co.jp/esd/foundation/voltage.html
静電気の発生原因 | 静電気の基礎知識 | 静電気ドクター | キーエンス
https://www.keyence.co.jp/ss/products/static/static-electricity/basic/cause.jsp