こんにちは、エクシールの今井です。
今回は食品工場での【ブロックチェーン活用】についてです。
近年、消費者の食品に対する安全性や品質に対する関心が高まる中、食品業界ではトレーサビリティ(追跡可能性)の強化が重要な課題となっています。特に食品の生産から消費に至るまでの過程を透明にするため、ブロックチェーン技術が注目されています。
この記事では、ブロックチェーン活用のメリットや実際の導入事例など紹介していきます。
トレーサビリティの重要性とブロックチェーン技術
■ トレーサビリティの重要性
食品業界におけるトレーサビリティとは、原料の仕入れから製品の出荷、消費に至るまでのすべてのプロセスを追跡し管理することを指します。これにより製品の品質や安全性を確保し、万が一問題が発生した際に迅速に原因を特定し、必要な対応を行うことができます。食品業界では特に食品のリコール(回収)やアレルゲン、温度管理などの重要性が増しているため、トレーサビリティは欠かせない要素となっています。
■ ブロックチェーン技術の特性と利点
ブロックチェーンは、分散型台帳技術を基盤にしており、データが複数のノード(サーバー)に分散して保存されるため、データの改ざんや不正アクセスがほぼ不可能です。この特性を活かし、食品工場ではサプライチェーンの各段階で発生するデータをブロックチェーン上に記録することで、全ての情報を透明にし、正確な追跡を実現することができます。
ブロックチェーンの導入によるメリット
食品工場のブロックチェーン技術導入によるメリットは以下のようなものがあります。
① データ改ざん防止
ブロックチェーンは一度記録したデータを書き換えたり消したりすることが難しいため、改ざんや不正行為を防ぐことができます。仮に不正な書き換えや消去を行おうとしても、異常をすぐに検知できます。食品の生産過程や流通経路、品質管理情報などが正確に記録され、消費者に対しても信頼性の高い情報を提供できます。
例えば、冷蔵食品や冷凍食品では温度管理が重要ですが、ブロックチェーンを活用することで輸送中の温度記録がリアルタイムで更新されるため、どの時点で温度異常が発生したかを追跡でき、食品の品質や安全性が保証されます。
② サプライチェーン全体の透明性
食品工場におけるトレーサビリティは、製品の原材料がどこからきたのか、どのように加工され流通して消費に至ったのかを消費者に透明に示すための手段として非常に有効です。各ステップごとに情報が更新されるため、サプライチェーン全体をリアルタイムで把握できます。
ブロックチェーンを活用すれば、世界中のどこからでも情報にアクセスできるようになるため、多国間、他企業間であっても安全なサプライチェーンを構築することができます。
例えば、消費者が製品に付与されたQRコードをスキャンすることで、その製品がどの農場で栽培されたか、どの工場で加工されたか、輸送中の状態など、詳細な情報を確認することができるため、消費者はより安心して食品を購入できるようになります。
③ デジタル化を推進してコスト削減
ブロックチェーンは分散型台帳技術によって、情報を安全に共有することができます。管理者や中央サーバーを設置しなくても、セキュリティの高いシステムを構築できるため、サプライチェーン全体のデジタル化を推進し、トレーサビリティ構築のコストを削減することができます。
またデータの共有が容易になれば、紙を使った契約書や手作業での集計が減り、トレーサビリティに必要なデータをサプライチェーン全体で活用できるようになります。
実際の導入事例
食品工場でブロックチェーンがどのように活用されているのか、事例を見てみましょう。
■ 大手食品メーカーの取り組み
ある大手食品メーカーは、サプライチェーンのトレーサビリティ向上のため、ブロックチェーン技術を導入しました。特に、原材料の仕入れから製品の製造、出荷に至るまで、すべてのプロセスをブロックチェーン上で記録し、消費者が製品情報を簡単に確認できるようにしています。QRコードをスキャンすることで、製品がどの農場から来たのか、製造過程のどの段階で品質チェックが行われたのかなどの詳細情報が得られます。
■ 鮮魚のトレーサビリティ
鮮魚業界でも、ブロックチェーンが導入されています。漁業者、加工業者、流通業者がブロックチェーンを通じてデータを共有し、消費者に対して鮮魚がどのように獲れ、どのように流通してきたかを透明に示すことができます。この取り組みは、鮮度管理の向上や食品の不正取引の防止にも寄与しています。
まとめ
食品工場でのトレーサビリティ強化には、ブロックチェーン技術が大きな役割を果たしています。この技術により、サプライチェーン全体の透明性が高まり、品質管理や食品安全の向上が図られるだけでなく、消費者の信頼も得ることができます。導入にはコストや業界全体での協力が必要ですが、将来的にはさらに普及し、より多くの企業が安全で高品質な製品を提供できるようになるでしょう。
<参考>
食品トレーサビリティのメリットとブロックチェーンが解決する課題とは?|ブロックチェーンビジネス・メディア
食品業界におけるブロックチェーンの導入事例|非金融ブロックチェーン研究所