こんにちは、エクシールの鷲見です。
食品製造業で起こることの多い労働災害は何かご存知ですか?
令和2年度に発生した事故を分類した結果は以下の通りです。
1位:転倒
2位:挟まれ・巻き込まれ
3位:切れ・こすれ
<参考>
中央労働災害防止協会「労働災害分析データ(食料品製造小計)」:https://www.jisha.or.jp
以前、転倒事故についての対策をご紹介しました。
↓過去の記事はこちら↓
今回は、食品製造業で二番目に発生しやすい『挟まれ・巻き込まれ』事故を防ぐために気を付けるべきことをご紹介してまいります。
挟まれ・巻き込まれによる事故は、切断機や混合機等の食品加工用機械の使用時に発生することが多いです。事故により身体の一部を損傷、場合によっては命に関わることもあり大変危険です。
これらの事故を未然に防ぐためには、どのような対策が必要となるのでしょうか。
食品製造業で起こる『挟まれ・巻き込まれ』事故の事例
過去に発生した挟まれ・巻き込まれ事故は以下のようなものがあります。
■事例1
食品加工混合機でそばの生地を製造作業中に、蓋を開け機械内の側面に張り付いた原材料を掻き落とそうとして腕が攪拌軸に巻き込まれた。
<原因>
・食品加工混合機の運転中に作業を行ったこと
・食品加工混合機の仕組みが自ら停止ボタンを押さないと停止しない構造であったこと
・食品加工混合機使用時の作業手順書が未作成で、作業者に周知されていなかったこと
■事例2
食品攪拌装置の洗浄作業中に、何らかのはずみで釜内部に倒れ込み回転していた攪拌羽に巻き込まれた。
<原因>
・食品攪拌装置に安全装置がついておらず、何らかの拍子で作業中に攪拌羽のスイッチが作動したこと
・作業手順書に異常時の処理手順等が定められていなかったこと
・巻き込まれリスク等についての安全教育が行われてなかったこと
■事例3
連続自動炊飯工程の点検作業中に、空の搬送容器と容器の反転装置の支柱の間にはさまれた。
<原因>
・装置の危険箇所周辺に柵やカバーが設置されていなかったこと
・反転装置に安全装置がついていなかったこと
・非定常時(通常時と異なる作業)の作業手順書が作成されていなかったこと
・機械稼働時に起こり得るリスクについての安全教育がされていなかったこと
『挟まれ・巻き込まれ』事故を未然に防ぐために
前項の事例で分かることは、多くの事故が機械稼働中に作業を行ったこと、作業手順書が未作成で独自の判断による行動をしたこと、機械稼働時に起こり得る危険について共有できていなかったことなどが原因として挙げられます。
これらに対して1つひとつ対策を講じることが、事故を防ぐことに繋がります。
機械に安全装置を設置する
食品工場では、様々な機械を稼働させます。正しく使用していても無意識に作業者が機械の一部に接触しそうになる時もあります。
機械の危険な箇所へのカバーの取り付け、インターロック構造を導入する等、安全装置を設置することで不注意による事故から作業者の安全を守りましょう。
平成25年10月1日に改正された労働安全衛生規則でも対象の機械への対策が義務化されました。
安全教育を行う
機械の稼働時に機械内に身を乗り出したり、手を入れたりすることによって発生する事例が多いです。
前項でご紹介した安全装置を設置する方法も、作業者が安全装置の必要性を理解しルールを守れていなければ意味がありません。
使用する機械を運転させる時のリスクを把握し、作業者が常に危険予知しながら作業をできるような教育が必要です。
安全教育は定期的に行い、その記録を作成、保存しておきましょう。
定常時・非定常時の作業手順書を作成、周知する
定常時はもちろん、非定常時(想定される異常事態や危険な状態)の対応方法を記した作業手順書を作成しましょう。
異常事態発生時の連携体制についても書面で作成します。
内容は作業者及び関係者に周知徹底し、手順に沿って作業を行えるようにします。
また、日常の作業の様子をこまめに確認し、定期的に手順書の内容を見直しましょう。
まとめ
今回は、挟まれ・巻き込まれ事故の事例と対策についてご紹介しました。
安全装置の導入は効果的ですが、作業者自身が機械を稼働させることによるリスクを把握し、不注意による事故が起きないよう安全意識を持つことが何よりも大切です。
そのために、起こり得るリスクとその対応方法について手順書や講習を通じて周知していきましょう。
<参考>
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/#